親愛なる読者の皆さま
業務効率化ラボの第2号をお届けします。今回は、業務効率化の要となる「非同期コミュニケーション」の有用性を詳しくご紹介します。
ここでは、ビジネスにおけるコミュニケーションの二つの主要な形態である「同期」と「非同期」について解説します。
それぞれの特徴と適用場面を理解した上で、状況に応じた最適なコミュニケーション方法を選択することが大事です。
同期コミュニケーション:
定義:リアルタイムの対話
例:対面ミーティング、電話会議、ビデオ通話
特徴:
非同期コミュニケーション:
定義:時間差で行われる情報交換
例:Eメール、チャットツール、タスク管理ツールのコメント機能
特徴:
非同期コミュニケーションは、業務効率化の要と言っても過言では無く、たいへんに有用な手段です。ここでは、非同期のコミュニケーションがもたらす主要なメリットについて詳しく解説します。
非同期コミュニケーションが、3つの観点(集中時間の確保、情報の永続性、時間とリソースの効率的活用)から業務効率を大幅に向上させるものであることを理解してください。
a)集中時間の確保
非同期コミュニケーションでは、受け手は自分のタイミングで返信できるため、深い集中(いわゆる「フロー状態」)を必要とする作業を中断することなく続けられます。
効果:
実践例:
b) 情報の永続性
チャットツールやメールでのやり取りは、自動的に記録として残るため、情報の追跡や共有が容易になります。
効果:
実践例:
c) 時間とリソースの効率的活用
非同期コミュニケーションを活用することで、不要なミーティングや待ち時間を削減し、より効率的に時間を使うことができます。
効果:
実践例:
これらの理論的な利点に加えて、非同期コミュニケーションの有用性は最新の研究結果によっても裏付けられています。
BMJ Journals(英国医師会の発行する医学雑誌)に掲載された医療現場を対象とした観察研究では、非同期コミュニケーションプラットフォームの導入が、タスク完了時間の短縮と効率の向上に大きく貢献したことが示されました。
研究のハイライト:
この研究結果は、医療分野のような時間的制約の厳しい環境においても、非同期コミュニケーションが有効であったことを示しています。
もちろん、他の業種に応用することで、多くの職場環境でも同様の効率向上が期待できるでしょう。
ここまでに述べてきた通り、非同期コミュニケーションの利点は多岐にわたりますが、その一方、特定の状況下においては、同期的なコミュニケーションが効果的な場合があります。
例えば、非同期によるやり取りが複数回往復している場合には、より迅速な情報交換をするために、同期的なコミュニケーションに移行することを推奨します。
その他にも、そもそも同期的なコミュニケーションが望ましい場面もありますので、これを紹介します。
a) 創造的な協働作業
例:新製品のアイデア出し、マーケティング戦略の立案
理由:即時のフィードバックが創造性を刺激し、アイデアの発展を促進
効果:多様な視点をリアルタイムで共有し、迅速なアイデアの発展が可能
b) 複雑な問題解決
例:システム障害の原因特定、クライアントの緊急要望への対応
理由:リアルタイムの情報交換と意思決定が必要
効果:問題の詳細を即座に共有し、解決策を迅速に検討・実行できる
c) 感情面でのサポートが必要な対話
例:パフォーマンス評価、チーム内の対立解決
理由:非言語コミュニケーションを含む丁寧な対応が可能
効果:表情や声のトーンなど、非言語的な要素を通じて相手の感情を理解し、適切に対応できる
d) 重要な意思決定や危機対応
例:大型プロジェクトの方向性決定、セキュリティインシデントへの対応
理由:迅速な情報共有と意思決定が不可欠
効果:状況の変化に即座に対応し、迅速かつ的確な判断を下すことが可能
これらの場面では、情報共有と意思決定のスピードを向上させるためにも、同期的なコミュニケーションを活用することをお薦めします。
もちろん、同期的なコミュニケーションの過度の利用は、参加者の時間を拘束し、業務の中断を招きますので、その状況に応じた適切なコミュニケーション方法の選択が前提となります。
非同期コミュニケーションと同期コミュニケーションを適切に組み合わせることで、組織全体のコミュニケーション効率を最大化し、生産性の向上に繋げましょう。
非同期コミュニケーションのためのツールは、チャットだけではありません。社内でのコミュニケーションにおいては、チャットツールが一般的になってきていますが、社外とのやり取りでは、まだ電子メールが用いられる場面も多いです。
電子メールは非常に強力なツールであり、世界中の誰にでも連絡を取る事ができる代わりに、私たちの時間を大量に奪う副作用があります。重要な仕事の邪魔になる雑音として、忌み嫌っている人も多いでしょう。
ここでは、主要な非同期コミュニケーションツールであるチャットツールと電子メールの活用法を詳しく解説し、それぞれのツールを最大限に活用するための考え方を紹介します。
a) チャットツール:主に社内で利用
チャットツールは、非同期コミュニケーションの中心的なツールとして機能します。以下の機能を活用することで、より効果的なコミュニケーションが可能となるでしょう。
1.チャンネルの戦略的利用:
2.スレッド機能の活用:
3.ステータス設定とリマインダーの利用:
上記の他、プロジェクト管理ツールやナレッジベースツールと合わせて活用することが効果を発揮させるコツとなります。(タスクに関するやり取りはプロジェクト管理ツールのコメント機能で行い、チャットツールにはその情報のURLを貼る、ナレッジベースの特定ページのリンクをチャットツールで共有する等)
b) 電子メール:社外とのやり取りに利用
社外とのコミュニケーションには、まだまだ電子メールが使用されることが多く、効果的な使用方法を知っておくことは重要です。
1.件名の明確化:
2.簡潔な本文:
3.返信期限の明示:
また、チャットツール(Slack等)との使い分けは、特に意識しておく必要があります。
電子メールは社外とのやり取りにのみ使用し、社外からのメールで重要な情報があれば、適宜チャットツールでチーム内に共有するという方法がお薦めです。これにより、社内外のコミュニケーションが効率的に行えるようになります。
非同期コミュニケーションの効果的な導入例として、完全リモート組織である「GitLab」の取り組みを紹介します。GitLabは非同期コミュニケーションを組織文化の中核に据え、高い生産性と効率性を実現しています。
1. 包括的なハンドブック:
2. 効率的な会議設計:
3. 部門横断的な協力体制:
4. 支援的な組織文化:
GitLabの事例は、非同期コミュニケーションが単なるツールの導入にとどまらず、組織全体の働き方や文化に深く根ざすことで、真の効果を発揮することを示しています。非同期コミュニケーションを導入しようとする他の組織にとって、貴重な参考事例となりますし、GitLabのハンドブックは研究する価値があります。
次号からは、Slackを活用したコミュニケーションについて、前後編に分けて、より詳しくご紹介する予定です。前編となる次号では、Slackの基本機能と導入メリット、チャンネルの効果的な設計と運用などをお伝えします。
チャットツールを未導入の方はもちろん、Slackを導入済みの方にも参考となる記事をお届けする予定です。お楽しみに!
業務効率化ラボ運営チーム