親愛なる読者の皆さま
業務効率化ラボの第6.5号をお届けします。(前回の第6号の補足的な内容となるため、第7号ではなく、第6.5号としています)
前回は「インボックスゼロ」の概念と実践方法についてご紹介しました。今回は、その補足として、チーム全体でインボックスゼロに取り組むために、リーダーとして何ができるかについて考えていきます。
まず、前回ご紹介した「インボックスゼロ」の主要ポイントを簡単におさらいしましょう。
インボックスゼロとは?:
受信トレイを常に空の状態に保つ習慣のこと
効率的なメール処理のための4つのアクション:
1. すること(Do):2分以内で完了できるタスクはその場で実行
2. 保留する(Defer):後で対応が必要なメールは将来のアクションとして記録
3. 誰かに任せる(Delegate):他の人が対応すべきメールは適切な人に転送
4. 削除する(Delete):不要なメールは即座に削除またはアーカイブ
実践のための3つの改善策:
1. メールの通知をオフにする
2. メールの応答時間をタイムブロッキングする
3. メールの対応時間を設定し、チームに共有する
これらを実践することで、メール対応の効率化と本質的な業務時間の確保が可能になります。
時として、インボックスゼロの考え方に対して、否定的な反応を返すリーダーがいます。以下に、よくある反応とそのエピソードをいくつかご紹介しておきます。
Aさんの上司は、メールを送信してから数分以内に返信がないと激怒し、すぐに電話をかけてきます。「緊急の案件なんだ!なぜすぐに返信しない!」と叱責されることもしばしば。この上司の行動により、Aさんは常にメールをチェックせざるを得ず、集中して仕事に取り組むことができません。
Bさんの部署では、他部署からのタスク依頼がメールで届きます。しかし、依頼者は期限を明記せず、メールの到達確認もしません。そのため、Bさんは重要な依頼を見逃すことを恐れ、常にメールボックスを監視する習慣がついてしまいました。
Cさんのマネージャーは、送信したメールの「既読」機能を常にオンにしており、部下が読んだかどうかを細かくチェックします。メールを読んでいないと「なぜ私のメールを無視するんだ」と詰問されるため、Cさんは仕事の合間を縫って頻繁にメールをチェックせざるを得ません。
D社では、経営陣の方針により、全てのメールを永久に保存することが義務付けられています。そのため、社員は膨大な量のメールを整理・分類する作業に追われ、本来の業務に集中できない状況が続いています。
これらのエピソードは、インボックスゼロの実践を困難にする典型的な例です。それぞれの例は、私の創作ではありますが、完全なフィクションというわけではありません。
外資系の総合コンサルファームのマネージャーの悩み相談に応える機会があったのですが、彼女の一番の悩みは「部下のメール返信が遅い」というものでした。
コロナ禍への対応の中で、以前に比べると、リモートでの非同期的な働き方も一般的になりましたが、多くの管理職の頭の中はアップデートされていません。(※変革に強そうな外資系コンサルの管理職から、このような悩みが出てくることは、ある意味、驚きでした)
インボックスゼロは、個人レベルで実践するだけでも一定の効果は得られます。しかしながら、組織全体の理解と協力がなければ、周囲とのコミュニケーションにおいてハレーションを引き起こす可能性もあります。前章で紹介したネガティブな反応は、まさにその例と言えるでしょう。
したがって、インボックスゼロの効果を最大限に引き出すためには、リーダーが率先して取り組み、組織全体の働き方を変えていくことが不可欠です。ここでは、リーダーが取るべき具体的なアクションを紹介します。
インボックスゼロ実践における最重要課題は、組織内のメールをはじめとするコミュニケーションのあり方を根本から見直すことです。数分以内の返信を期待するような「即レス文化」は、業務効率化の大敵です。このような文化を変えていくのは、リーダーの重要な役割です。
リーダーは、チーム全体のコミュニケーションを俯瞰的に見守る必要があります。メールに限らず、チャットツールなどにおいても、即時の返信を期待するのではなく、メンバーが自身の業務に集中できる環境を整えることが大切です。
インボックスゼロや非同期コミュニケーションに適したチーム内のコミュニケーションルールを策定し、浸透させるのもリーダーの役割です。
以下に、効果的なルールの例をいくつか挙げます:
リーダー自身がインボックスゼロを実践し、その効果を可視化することも重要です。具体的には以下のようなアクションが考えられます:
上記のような取り組みに加え、継続的な改善とフォローアップを行うと、より効果は高まるでしょう。リーダーが率先してインボックスゼロに取り組み、組織全体のコミュニケーションを最適化することで、チーム全体の生産性向上と、より健全な職場環境の実現が期待できます。
組織文化を変革し、インボックスゼロを効果的に導入するためのもう一つの重要な処方箋は、業務効率化コンサルタントによる確認です。専門家の視点を取り入れることで、組織の盲点を発見し、より効果的な実践が可能になります。
業務効率化ラボでも、組織のコミュニケーション改善を支援するため、以下のようなコンサルティングメニューを提供しています:
どちらも重要なテーマなのですが、それぞれの組織に合ったコミュニケーションプラットフォームを導入した上で、それが従業員に浸透するように啓蒙活動をする必要があるという点では、従業員個別の1on1セッションも重要な活動です。
業務効率化ラボのコンサルティングサービスを利用することが難しい場合には、より簡易で継続的な取り組みとして、内部リソースを活用する方法もあります。(※実際、私たちのコンサルティングセッションは、予約制となっており、タイムリーにサービス提供することが難しい場合も多いです)
具体的には以下のような取り組みが考えられます:
このような内部での取り組みを継続的に行うことで、外部コンサルタントによる大規模な介入がなくても、着実に組織の効率化を進めることが可能です。
定期的なチェックと改善の仕組みを組織内に構築することで、変化の激しいデジタル環境にも柔軟に対応できる文化を醸成できるでしょう。
外部の専門家によるコンサルティングも非常に効果的ですが、これと併せて、内部リソースを活用した継続的な改善に取り組むことも大事な事です。この両方をバランス良く取り入れることが重要です。
インボックスゼロの実践は、個人の努力だけでなく、組織全体で取り組むことで大きな効果を発揮します。リーダーの皆さまには、自ら率先して実践し、チーム全体の意識改革をリードしていただきたいと思います。
また、外部の専門家の力を借りることで、より効果的かつスムーズな導入が可能になります。ぜひ、これらの方法を組み合わせて、生産性の高い、メールに振り回されない組織づくりに取り組んでみてください。
業務効率化ラボ運営チーム