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【第6.5号】チームで取り組む「インボックスゼロ」
インボックスゼロに取り組むためにリーダーができること
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業務効率化ラボ
2024/10/07

親愛なる読者の皆さま


業務効率化ラボの第6.5号をお届けします。(前回の第6号の補足的な内容となるため、第7号ではなく、第6.5号としています)


前回は「インボックスゼロ」の概念と実践方法についてご紹介しました。今回は、その補足として、チーム全体でインボックスゼロに取り組むために、リーダーとして何ができるかについて考えていきます。

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📥インボックスゼロのおさらい

まず、前回ご紹介した「インボックスゼロ」の主要ポイントを簡単におさらいしましょう。


インボックスゼロとは?:
 受信トレイを常に空の状態に保つ習慣のこと


効率的なメール処理のための4つのアクション:

1. すること(Do):2分以内で完了できるタスクはその場で実行

2. 保留する(Defer):後で対応が必要なメールは将来のアクションとして記録

3. 誰かに任せる(Delegate):他の人が対応すべきメールは適切な人に転送

4. 削除する(Delete):不要なメールは即座に削除またはアーカイブ


実践のための3つの改善策:

1. メールの通知をオフにする

2. メールの応答時間をタイムブロッキングする

3. メールの対応時間を設定し、チームに共有する


これらを実践することで、メール対応の効率化と本質的な業務時間の確保が可能になります。


🚫よくあるリーダーのネガティブな反応

時として、インボックスゼロの考え方に対して、否定的な反応を返すリーダーがいます。以下に、よくある反応とそのエピソードをいくつかご紹介しておきます。


エピソード1:「即レス」を求める上司

Aさんの上司は、メールを送信してから数分以内に返信がないと激怒し、すぐに電話をかけてきます。「緊急の案件なんだ!なぜすぐに返信しない!」と叱責されることもしばしば。この上司の行動により、Aさんは常にメールをチェックせざるを得ず、集中して仕事に取り組むことができません。


エピソード2:期限の曖昧な依頼者

Bさんの部署では、他部署からのタスク依頼がメールで届きます。しかし、依頼者は期限を明記せず、メールの到達確認もしません。そのため、Bさんは重要な依頼を見逃すことを恐れ、常にメールボックスを監視する習慣がついてしまいました。


エピソード3:「既読」を求めるマイクロマネージャー

Cさんのマネージャーは、送信したメールの「既読」機能を常にオンにしており、部下が読んだかどうかを細かくチェックします。メールを読んでいないと「なぜ私のメールを無視するんだ」と詰問されるため、Cさんは仕事の合間を縫って頻繁にメールをチェックせざるを得ません。


エピソード4:「全て保存」を強要する経営陣

D社では、経営陣の方針により、全てのメールを永久に保存することが義務付けられています。そのため、社員は膨大な量のメールを整理・分類する作業に追われ、本来の業務に集中できない状況が続いています。



これらのエピソードは、インボックスゼロの実践を困難にする典型的な例です。それぞれの例は、私の創作ではありますが、完全なフィクションというわけではありません。


外資系の総合コンサルファームのマネージャーの悩み相談に応える機会があったのですが、彼女の一番の悩みは「部下のメール返信が遅い」というものでした。


コロナ禍への対応の中で、以前に比べると、リモートでの非同期的な働き方も一般的になりましたが、多くの管理職の頭の中はアップデートされていません。(※変革に強そうな外資系コンサルの管理職から、このような悩みが出てくることは、ある意味、驚きでした)


👨‍💼処方箋その1:リーダーによる実践

インボックスゼロは、個人レベルで実践するだけでも一定の効果は得られます。しかしながら、組織全体の理解と協力がなければ、周囲とのコミュニケーションにおいてハレーションを引き起こす可能性もあります。前章で紹介したネガティブな反応は、まさにその例と言えるでしょう。


したがって、インボックスゼロの効果を最大限に引き出すためには、リーダーが率先して取り組み、組織全体の働き方を変えていくことが不可欠です。ここでは、リーダーが取るべき具体的なアクションを紹介します。


組織のコミュニケーション再構築

インボックスゼロ実践における最重要課題は、組織内のメールをはじめとするコミュニケーションのあり方を根本から見直すことです。数分以内の返信を期待するような「即レス文化」は、業務効率化の大敵です。このような文化を変えていくのは、リーダーの重要な役割です。


リーダーは、チーム全体のコミュニケーションを俯瞰的に見守る必要があります。メールに限らず、チャットツールなどにおいても、即時の返信を期待するのではなく、メンバーが自身の業務に集中できる環境を整えることが大切です。


コミュニケーションルール最適化

インボックスゼロや非同期コミュニケーションに適したチーム内のコミュニケーションルールを策定し、浸透させるのもリーダーの役割です。


以下に、効果的なルールの例をいくつか挙げます:

  • コミュニケーション手段の明確化
    • メール、チャット、対面ミーティングなど、各コミュニケーション手段の使い分けを明確にする
    • 緊急度に応じた連絡手段を定める(例:緊急時はSlackの特定チャンネル、それ以外はメール)
  • 返信期待時間の設定
    • メールの返信期待時間をチーム内で共有する(例:1営業日以内)
    • この期待時間を守ることで、不必要な催促や確認のコミュニケーションを減らす
  • メールの形式統一
    • 件名の明確化(例:「【回答期限:5/20】企画書へのフィードバック依頼」)
    • 本文は3行以内で主旨を伝え、詳細は箇条書きで提示する
    • CCの使用を必要最小限に抑え、真に必要な人にのみ送信する
  • 定期的なメンテナンス時間の設定
    • 週に1回、30分程度の「メールクリーンアップタイム」をチーム全体で設定する
    • この時間を活用して、メールの整理や返信、タスク化を集中して行う


リーダー自身の実践

リーダー自身がインボックスゼロを実践し、その効果を可視化することも重要です。具体的には以下のようなアクションが考えられます:


  • 自身の取り組みの共有
    • インボックスゼロ実践による時間の使い方の変化や、生産性向上の具体例を共有する
    • 失敗談も含めて率直に共有し、チーム全体の学びにつなげる
  • 成功事例の表彰と共有
    • インボックスゼロを効果的に実践しているメンバーを表彰し、その方法を全体で共有する
    • チーム全体の改善状況を可視化し、進捗を祝福する
  • オフィスアワーの設定
    • リーダー自身が「メール対応の時間」を設定し、それ以外の時間は集中作業に充てることを明示する
    • これにより、チームメンバーも同様の時間管理が可能になることを示す


上記のような取り組みに加え、継続的な改善とフォローアップを行うと、より効果は高まるでしょう。リーダーが率先してインボックスゼロに取り組み、組織全体のコミュニケーションを最適化することで、チーム全体の生産性向上と、より健全な職場環境の実現が期待できます。


🔍処方箋その2:業務効率化コンサルタントを活用する

組織文化を変革し、インボックスゼロを効果的に導入するためのもう一つの重要な処方箋は、業務効率化コンサルタントによる確認です。専門家の視点を取り入れることで、組織の盲点を発見し、より効果的な実践が可能になります。


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業務効率化ラボの提供サービス

業務効率化ラボでも、組織のコミュニケーション改善を支援するため、以下のようなコンサルティングメニューを提供しています:


  • 組織全体のコミュニケーションプラットフォーム導入相談
    • 組織の現状分析
    • 最適なツールの選定アドバイス
    • 導入計画の策定支援
  • 従業員個別の1on1セッション
    • 日常的に使用するコミュニケーションツール(Gmail、Asana、Slack、Notion)の利用状況確認
    • 個々の業務スタイルに合わせた効率化アドバイス
    • ツールの高度な機能や連携方法の紹介


どちらも重要なテーマなのですが、それぞれの組織に合ったコミュニケーションプラットフォームを導入した上で、それが従業員に浸透するように啓蒙活動をする必要があるという点では、従業員個別の1on1セッションも重要な活動です。


内部リソースの活用

業務効率化ラボのコンサルティングサービスを利用することが難しい場合には、より簡易で継続的な取り組みとして、内部リソースを活用する方法もあります。(※実際、私たちのコンサルティングセッションは、予約制となっており、タイムリーにサービス提供することが難しい場合も多いです)


具体的には以下のような取り組みが考えられます:

  1. 社内コンサルタントの任命
    • ITツールに詳しい従業員を「効率化推進担当」として任命
  2. 定期的なチェックインの実施
    • 定期的(四半期や半期ごと)に「効率化推進担当」が短時間セッションを設定
    • 各従業員のツール活用状況や課題をヒアリング
  3. ベストプラクティスの共有会
    • ツール活用方法や時間管理術を共有するセッションの開催
    • 従業員同士で学び合える環境の構築
  4. オンラインリソースの整備
    • 社内Wikiやナレッジベースにツールの使い方や効率化のコツをまとめたページを作成し、従業員が参照するように促す


このような内部での取り組みを継続的に行うことで、外部コンサルタントによる大規模な介入がなくても、着実に組織の効率化を進めることが可能です。


定期的なチェックと改善の仕組みを組織内に構築することで、変化の激しいデジタル環境にも柔軟に対応できる文化を醸成できるでしょう。


外部の専門家によるコンサルティングも非常に効果的ですが、これと併せて、内部リソースを活用した継続的な改善に取り組むことも大事な事です。この両方をバランス良く取り入れることが重要です。


本日のまとめ

インボックスゼロの実践は、個人の努力だけでなく、組織全体で取り組むことで大きな効果を発揮します。リーダーの皆さまには、自ら率先して実践し、チーム全体の意識改革をリードしていただきたいと思います。


また、外部の専門家の力を借りることで、より効果的かつスムーズな導入が可能になります。ぜひ、これらの方法を組み合わせて、生産性の高い、メールに振り回されない組織づくりに取り組んでみてください。


業務効率化ラボ運営チーム