親愛なる読者の皆様、
業務効率化ラボの第8号へようこそ。前回は、Asanaの基本機能と導入メリットについてご紹介しました。今回は、その知識をベースに、Asanaを活用したワークロード管理とキャパシティプランニングについて深掘りしていきます。
中小企業や個人事業主の皆様にとって、限られたリソースを最大限に活用することは事業成功の鍵と言えます。
本号では、Asanaを使ってチームの作業負荷を適切に管理する手法、ワークロードの可視化からキャパシティの最適化、実践的なワークロード管理の手法までを詳しくご紹介します。
🔍前編のおさらい:Asanaの基本概念と特徴
本編に入る前に前回のニュースレターでお伝えしたAsanaの基本概念と特徴、タスク登録のコツを思い出しておきましょう。Asanaの主要機能や特徴的な階層構造の考え方を再確認することで、効率的な業務管理の土台を整えます。適宜、前号の内容も見返してください。
Asanaの主な特徴
- プロジェクトとタスクの一元管理
- 複数の表示形式(リスト、ボード、カレンダー、タイムライン)
- タスクへのコメント機能によるコミュニケーション
- プロジェクトの進捗管理とレポート機能
- カスタムフィールドによる柔軟なワークフロー設計
Asanaの階層構造
- タスク:具体的な作業の単位
- プロジェクト:関連するタスクのグループ
- ポートフォリオ:複数のプロジェクトをまとめた最上位層
タスク登録のポイント
- 具体的で行動可能な表現を使用
- 明確な説明、担当者、期日を設定
- 完了条件を明確化
- 関連情報を添付
これらの基本を踏まえ、今回はワークロード管理とキャパシティプランニングについて詳しく見ていきます。
⚖️ワークロード管理の基本的な考え方
ワークロード管理は、チーム全体の生産性と個々のメンバーの健康的な労働環境を両立させるために不可欠です。
ワークロード管理が事業にもたらす具体的なメリットと、効果的な管理のための基本的な考え方を示しておきます。
ワークロード管理の重要性:
- バーンアウトの防止:適切な作業量の分配により、チームメンバーの疲弊を防ぎます。
- 生産性の向上:各メンバーの能力を最大限に引き出し、チーム全体の生産性を高めます。
- プロジェクトの遅延リスク低減:適切なリソース配分により、締め切りの遅れを防ぎます。
- チームの満足度向上:公平な業務分配により、チームの士気を高めます。
ワークロード管理の基本的な考え方:
- 可視化:各メンバーの作業量を可視化し、全体像を把握します。
- 平準化:作業量の偏りを是正し、チーム全体で均等に分配します。
- 最適化:各メンバーのスキルと経験に応じて、適切なタスクを割り当てます。
- 予測:将来的な作業量を予測し、先手を打って対応します。
- 柔軟性:状況の変化に応じて、柔軟にリソースを再配分します。
🛠️Asanaでの実践的なワークロード管理
ここからは、Asanaの具体的な機能を使って、どのようにワークロード管理を実践できるかを詳しく解説します。Asanaのワークロードビューやダッシュボード機能を最大限に活用し、効率的なリソース管理を実現する方法を学びましょう。
ワークロード管理機能の活用
Asanaには強力なワークロード管理機能が組み込まれています。この機能を使うことで、以下のような管理が可能になります:
- キャパシティ管理:チームの抱える仕事の把握と適切な量の仕事の割当を行う
- 仕事量のバランス調整:チームメンバー間の作業負荷を均等化する
- 未来の仕事量の可視化:将来的な作業量を予測し、先手を打って対応する
これらの機能を最大限に活用するために、各タスクにカスタムフィールドとして「予測時間」と「実績時間」を追加することをお勧めします。時間ベースでの計測と予測が可能になり、より正確なワークロード管理が実現できます。
チームメンバーの負荷状況の予測と計画
チームメンバーの負荷状況の予測とそれに基づいた計画の調整については、Asanaのポートフォリオ機能を利用します。具体的な手順を以下に示しておきます。
- ポートフォリオの作成:
- 関連するプロジェクトをグループ化し、ポートフォリオを作成します。
- これにより、複数のプロジェクトにまたがるタスクの全体像を把握できます。
- ワークロードビューの活用:
- ポートフォリオ内の「ワークロード」タブを使用して、各メンバーの作業量を視覚化します。
- タスクの期間や工数を設定し、メンバーごとの負荷を確認します。
- キャパシティの設定:
- 各メンバーの1日あたりの作業可能時間(キャパシティ)を設定します。
- これにより、過剰な作業割り当てを防ぎます。
- 負荷の調整:
- ワークロードビューで過負荷や負荷の少ないメンバーを特定し、タスクの再分配を行います。
- ドラッグ&ドロップでタスクを別のメンバーに簡単に割り当て直すことができます。
実績の可視化と分析方法
次に実績時間を可視化し、分析するための手法を示します。
- タイムトラッキング:
- Asanaに備わっているタイムトラッキング機能を用いるとカスタムフィールドの実績時間のトラッキング結果が入力されます。
- Asana以外の時間計測ツールにも良いものがあります。
- 外部のタイムトラッキングツールを利用して、別途、日別の実績時間を入力する運用にしてもかまいません。
- 例えば、togglなどは検討の余地があるでしょう
- 時間管理をそこまで厳密に実施する必要がある場合は少なく、大まかな管理で良いという割り切りが可能であれば、各タスクに実績時間を手動で入力する方法でも効果はあります。
- ダッシュボードの活用:
- カスタムダッシュボードを作成し、重要なメトリクス(完了タスク数、残タスク数、進捗率など)を一目で把握できるようにします。
- レポート機能の利用:
- Asanaのレポート機能を使用して、プロジェクトやチームメンバーごとの実績を分析します。
- 定期的にレポートを確認し、傾向や問題点を把握します。
- ふりかえりの実施:
- 定期的に(例:2週間ごと)チームでふりかえりを行い、ワークロードの適切さや改善点を議論します。
- これはアジャイル開発のスプリントレビューの考え方を取り入れたものです。
📊実践的なワークロード管理の手法
ワークロード管理を効果的に行うには、チームおよびチームメンバーの実際の処理能力を正確に把握することが何よりも重要です。
ここでは、処理能力の計算方法と、Asanaを用いた実践的なワークロード管理の手法について解説します。
処理能力の計算
チームおよびチームメンバーの処理能力(業務に使える時間)を計画するためには、以下の数式を用います。
処理能力 = キャパシティ - 事務作業 - ミーティング時間
- 処理能力:業務に実際に使える時間
- キャパシティ:仕事に使う総時間(週に40時間など)
- 事務作業:事務作業やその職務において担当するべき雑務にかかる時間
- ミーティング:ミーティングにかかる時間
この数式は単純で当たり前のことを示しているだけのようにも見えますが、多くの職場では、この単純な数式すらも用いられていないように思います。
Asanaでのキャパシティ設定
Asanaでは、チームメンバーごとにキャパシティを設定できます。
例えば:
- フルタイムのメンバー:40時間
- パートタイムのメンバー:20時間
上記のようにキャパシティを設定した上で、Asana上でも「ミーティング」と「事務作業」の時間を適切に割り当てるためにタスク登録しておきましょう。このひと手間によって、チームやチームメンバーの実際の処理能力を正確に計算することが可能になります。
タスクの割り振り
タスクを割り振る際は、計算された「本当の」処理能力に対して割り当てることが重要です。
タスク量が処理能力を超えた場合の対処法:
- 処理能力に余裕のある他メンバーにタスクを再割り当てする
- 事務作業の時間を減らす
- ミーティングの時間を減らす(「【第5号】効率的なミーティングの実現」を参照)
- 仕事そのものを減らす
上記は、実際的ではない単なる理想論に見えるかもしれません。しかしながら、チームメンバーや従業員のキャパシティに応じたタスク割当てのためには、この方法を愚直に進める以外の道はありません。
場合によっては、ミーティング時間の削減にチャレンジする、事務作業を効率化する等の効率化のための施策を検討する必要があるでしょう。
定期的な見直し
処理能力に応じたタスクの割り当ては、2週間に1回くらいの頻度での見直しを推奨します。
見直しのポイント:
- 仕事は順調に達成できているか
- 達成できていない場合、処理時間はどのように使われたか
- 得られた情報を次の2週間の計画にどう反映させるか
この定期的な見直しと調整により、より効果的なワークロード管理が可能になります。継続的な改善のためにPDCAサイクルを回していきましょう。
💡その他のTIPS
ワークロード管理をさらに効果的に行うための追加のTIPSをご紹介しておきますので、是非、参考にしてみてください。
緊急タスクが発生した場合の対処法
- 次のサイクルまで待てるか判断する:
- 2週間サイクルで管理している場合、多くの「緊急」タスクは実際には次のサイクルまで待てることがあります。
- 優先度の再評価:
- 進行中のサイクルに含める必要がある場合、新タスクと既存タスクの優先度を比較します。
- 他のタスクを先送りにする必要があるか検討します。
- 緊急タスクの受け入れ:
- 本当に緊急で優先度が高い場合、他のタスクを次のサイクルに回して対応します。
- 緊急タスクの可視化:
- タスク名に「【緊急】」を追加することで、緊急タスクの発生頻度を分析できます。
- これにより、タスクの緊急性を視覚的に判断しやすくなります。
推定時間を判断する際の具体的な手法
- 事務作業時間の調整:
- 多くの場合、事務作業の時間が正しく予測できないことが原因で処理時間が不足します。
- 2週間サイクルの見直しのタイミングで調整していきましょう。
- フィボナッチ数列の活用:
- タスクの予測時間を出すのに時間がかかる場合、フィボナッチ数列を用いる方法がお勧めです。
- 数列:1, 1, 2, 3, 5, 8, 13, 21, 34, 55...
- 例:7時間か8時間か悩む場合は8時間と設定
- 例:8時間以上かかるが21時間とするには大袈裟なタスクがあった場合には、フィボナッチ数列から13時間を選択
上記のTIPSは、現場で培われた実践的な方法です。フィボナッチ数列を用いる方法は、正確な時間見積もりを求める方には合わないかもしれませんが、見積もりに時間をかけすぎて非効率になっているチームリーダーや管理者には効果的です。是非、お試しください。
🎯まとめ
Asanaを活用したワークロード管理は、チームの生産性向上と持続可能な成長に不可欠です。処理能力を正確に把握した上で、適切にタスクを割り振ることで、より効率的な業務管理が可能になるでしょう。
次回は、Asanaを活用した目標設定をテーマに解説します:
- Asanaの特徴:タスク、プロジェクトと組織目標のシームレスな連携
- Asanaにおけるゴール(目標)機能の詳細説明
- 目標管理を通じた組織全体のパフォーマンス向上策
Asanaによる目標設定とその管理の具体的な方法をお伝えします。お楽しみに!
業務効率化ラボ運営チーム